平成二十七年 漢詩奉納

                             小松梅林吟社事務局




 

 石川県内の漢詩愛好家でつくる小松梅林吟社は、平成十四年斎行の「菅公千百年大祭」での漢詩奉納を契機に、平成十五年に小松漢詩同好会として発足し、翌平成十六年に小松梅林吟社と名称変更されました。今年は、平成十五年の第一回漢詩奉納から十三回目の奉納祭を迎え、来る秋季例祭日の九月四日午後に斎行されますが、六月例会において、奉納漢詩が左記のようにとりまとめられました。吟社会員一同は毎月稚松公民館にて開催の例会時に吟社顧問の宮前外彌旺氏はじめ会員各位の批評をうけて創作に励み、また、吟社顧問の金沢学院大学院柳澤良一氏の指導をうけながら推敲を重ね奉納祭に臨みます。

  望八ヶ嶽 八(やつ)ヶ(が)岳(たけ)を望(のぞ)む
                  柳澤良一
碧天萬里凜霜威  碧(へき)天(てん)万(ばん)里(り) 霜(そう)威(い)凜(りん)たり
滿地皚皚山雪輝  満(まん)地(ち)皚(がい)皚(がい)として山(さん)雪(せつ)輝(かがや)く
八嶽八容無限興  八(はち)岳(がく)八(はち)容(よう) 無(む)限(げん)の興(きょう)あり
故鄕淸景且忘歸  故(こ)郷(きょう)清(せい)景(けい) 
             且(しばら)く帰(かえ)るを忘(わす)る

 觀櫻吟社例會   観桜(はなみ)の吟(ぎん)社(しや)例会(れいかい)     
                    明鳳   宮前外彌旺
櫻花爛漫訪蘆城  桜花(おうか)爛漫(らんまん)たる 芦(ろ)城(じよう)を訪(おとず)れば
遅日晴天衆目驚  遅日(ちじつ)の晴天(せいてん)に 衆目(しゆうもく)は驚(おどろ)く
萬朶嬌紅春欲衍  万朶(ばんだ)の嬌紅(きようこう)に 
             春(はる)は衍(あふれ)んと欲(ほつ)し
艷葩無比興從横 艶葩(えんは)比(たぐい)無(な)く 興(きよう)は縦横(じゆうおう)たり


 老境又迎春    老(ろう)境(きょう)に又(また)春(はる)を迎(むか)える
                   小川大太郎
九十七齢猶健康  九(きゅう)十(じゅう)七(しち)齢(れい)猶(な)お健(けん)康(こう)
庭梅鶯囀興無疆  庭(てい)梅(ばい)に鶯(うぐいす)囀(さえず)り
             興(きょう)疆(きわまり)無(な)し
吟笻到處詩情育  吟(ぎん)笻(きょう)到(いた)る処(ところ)詩(し)情(じょう)育(はぐく)み
獨住餘生筆不忘  独(ひと)り住(す)む余(よ)生(せい)に筆(ふで)を忘(わす)れず


 信州山葵園    信(しん)州(しゅう)山葵(わさび)園(えん)
                   勝木倶子
田圃整然白蕾姿  田(でん)圃(ぽ)整(せい)然(ぜん)として白(はく)蕾(らい)の姿(すがた)
清澄溪澗育山葵  清(せい)澄(ちょう)の渓(けい)澗(かん)山(さん)葵(き)を育(はぐく)む
水車點在鄕愁影  水(すい)車(しゃ)点(てん)在(ざい)す
             郷(きょう)愁(しゅう)の影(えい)あり
春淺安曇野景披  春(はる)浅(あさ)き安曇野(あづみの)の景(けい)披(ひら)けたり


 訪巾着田曼珠沙華公園
巾(きん)着(ちゃく)田(だ)曼(まん)珠(じゅ)沙(しゃ)華(げ)公(こう)園(えん)を訪(と)う
                   加茂達子
行樂公園花客譁  公(こう)園(えん)を行(こう)楽(らく)すれば 
             花(か)客(かく)譁(かまびす)し
深紅絨緞夕陽斜  深(しん)紅(く)の絨(じゅう)緞(たん) 夕(せき)陽(よう)斜(なな)めなり
招魂彼岸覺生繫  招(しょう)魂(こん)の彼(ひ)岸(がん) 
             生(いのち)の繫(つな)がりを覚(おぼ)え
慶事先知天上花  慶(けい)事(じ) 先(ま)ず知(し)る 天(てん)上(じょう)の花(はな)


 三保松原 三(み)保(ほ)の松(まつ)原(ばら)
                    河島 晃
沙鷗游戲白波重  沙(さ)鷗(おう)游(ゆう)戯(ぎ)して 白(しら)波(なみ)重(しげ)し
碧海茫茫十里松  碧(へき)海(かい) 茫(ぼう)茫(ぼう) 十(じゅう)里(り)の松(まつ)
聞説天風羽衣舞  聞(き)説(く)ならく 天(あまつ)風(かぜ) 羽(は)衣(ごろも)の舞(まい)
暫留雲上彩霞濃  暫(しば)らく雲(うん)上(じょう)に留(とど)めん 
              彩(さい)霞(か)濃(こま)やかなり


 自適 自(じ)適(てき)
                     北出美千代
奉職專心歳月盈  奉(ほう)職(しょく)専(せん)心(しん)歳(さい)月(げつ)盈(み)ちて
去年歸老故園氓  去(きょ)年(ねん)帰(き)老(ろう)し故(こ)園(えん)の氓(たみ)となる
餘生自問將何濟  余(よ)生(せい)自(じ)問(もん)す
              将(まさ)に何(なに)をか済(な)さんとすと
唯慕淵明詩酒情  唯(た)だ淵(えん)明(めい)詩(し)酒(しゅ)の情(じょう)を慕(した)ふのみ


 悲劇大津皇子   悲(ひ)劇(げき)の大(おお)津(つの)皇(おう)子(じ)
                      久保田ひさ子
書窗煙雨滿春園  書(しょ)窓(そう)の煙(えん)雨(う) 春(しゅん)園(えん)に満(み)ち
盡日閑居弔夢魂  尽(じん)日(じつ)閑(かん)居(きょ)し夢(む)魂(こん)を弔(とむら)う
謀叛讒言無限恨  謀(む)叛(ほん)の讒(ざん)言(げん) 無(む)限(げん)の恨(うら)み
俊髦無念慘悽寃  俊(しゅん)髦(ぼう)の無(む)念(ねん)寃(えん)に惨(さん)悽(せい)たり


 訪枝垂櫻里空谷園  枝(し)垂(だ)れ桜(ざくら)の里(さと)空(そら)谷(たに)園(えん)
               を訪(たず)ねる
                      小島正喜
洛北尋春羇旅時  洛(らく)北(ほく)に春(はる)を尋(たず)ねて羇(き)旅(りょ)の時(とき)
櫻花遠近萬枝垂  桜(おう)花(か)遠(とお)くに近(ちか)くに万(ばん)枝(し)垂(た)れたり
幽姿撩乱興尤奇  幽(ゆう)姿(し)撩(りょう)乱(らん) 興(きょう)尤(もっと)も奇(き)なり
秀色風光到處宜  秀(しゅう)色(しょく)の風(ふう)光(こう)到(いた)る処(ところ)
           宜(よろ)し


 訪湖南三山 湖(こ)南(なん)三(さん)山(ざん)を訪(たず)ねる
                      白村浩邦
湖南歷訪佛縁鄕  湖(こ)南(なん)の歴(れき)訪(ほう)は 仏(ぶつ)縁(えん)の郷(さと)
古刹三山國寶蔵  古(こ)刹(さつ)の南(なん)三(さん)山(ざん)に 
           国(こく)宝(ほう)蔵(ひそ)みたり
隠曖幽庭閑寂境  隠(いん)曖(あい)なる幽(ゆう)庭(てい)は 
           閑(かん)寂(じゃく)の境(きょう)あり
仰瞻堂宇俗情忘  堂(どう)宇(う)を仰(ぎょう)瞻(せん)すれば 
           俗(ぞく)情(じょう)忘(わす)る


 駆車行歳朝山中温泉街
   車(くるま)を駆(か)りて歳(さい)朝(ちょう)の
           山(やま)中(なか)温(おん)泉(せん)街(がい)を行(ゆ)く
                       鈴木 緑
曉粧一白被松門  暁(ぎょう)粧(しょう) 一(いっ)白(ぱく) 
            松(しょう)門(もん)を被(おお)う
窗外湯池煙霧繁  窓(そう)外(がい)の湯(とう)池(ち) 煙(えん)霧(む)繁(しげ)し
先達詩興眞感服  先(せん)達(だつ)の詩(し)興(きょう) 真(しん)に感(かん)服(ぷく)す
溪間萬樹雪花媛  渓(けい)間(かん)の万(ばん)樹(じゅ) 雪(せっ)花(か)媛(うつく)し


 菜園樂 菜(さい)園(えん)の楽(たの)しみ
                       辻 美智子
夫君退官學躬耕  夫(ふ)君(くん)官(かん)を退(しりぞ)きて 
           躬(きゅう)耕(こう)を学(まな)ぶ
時節圃畦相照明  時(じ)節(せつ)の圃(ほ)畦(けい) 相(あい)照(て)らして明(めい)なり
日日生長無限趣  日(ひ)日(び)の生(せい)長(ちょう) 無(む)限(げん)の趣(おもむき)あり
兒孫食頃樂歡聲  児(じ)孫(そん)が食(しょく)頃(けい)の 
           歓(かん)声(せい)を楽(たの)しむ


 丈母迎白壽  丈(じょう)母(ぼ)白(はく)寿(じゅ)を迎(むか)える
                        中 誠治
老均期頤餘一年  老(ろう)均(し)期(き)頤(い) 一(いち)年(ねん)を余(あま)す
楚腰矍鑠不筇前  楚(そ)腰(よう)矍(かく)鑠(しゃく)たり筇(つえ)ならずして前(すす)む
再三話柄似童子  再(さい)三(さん)の話(わ)柄(へい)童(どう)子(じ)に似(に)たり
偏念安閑天壽全  偏(ひとえ)に念(ねん)ず安(あん)閑(かん)と
           天(てん)寿(じゅ)の全(まっとう)を


 天満宮朝   天満宮(てんまんぐう)の朝(あさ)
                    梯舟   能登外茂次
古廟早朝梯水   古廟の早朝 梯水の涯(ほとり)
有誰先我訪梅花  誰(だれ)か有(あ)らんや 我(われ)より先(さき)に
           梅花(ばいか)を訪(と)うは
樹間笑語両三影  樹間の笑語(しようご) 両三(りようさん)の影(かげ)
霞袖佳人和雪葩  霞(か)袖(しゆう)の佳人(かじん) 雪葩(せつは)に和(わ)す


 觀梅津大崎櫻 梅(うめ)津(づ)大(おお)崎(さき)桜(ざくら)を観(み)る
                       東 要
夜來雨霽片風吹  夜(や)来(らい)の雨(あめ)霽(は)れ 片(へん)風(ぷう)吹(ふ)く
遠路駆車紅景嬉  遠(えん)路(ろ)車(くるま)を駆(か)って紅(こう)景(けい)嬉(たの)し
遙見飛花點湖面  遥(はる)かに見(み)る飛(ひ)花(か) 湖(こ)面(めん)に点(てん)ず
周行満喫好追隨  周(しゅう)行(こう)満(まん)喫(きつ) 好(こう)追(つい)随(ずい)


 早春偶成  早(そう)春(しゅん)偶(ぐう)成(せい)
                       堀田正道
春信三寒又四温  春(しゅん)信(しん)は三(さん)寒(かん)又(また)四(し)温(おん)
萌生坡下水禽喧  萌(ほう)生(せい)の坡(は)下(か)水(すい)禽(きん)喧(けん)たり
苦吟拂拭詩膓蠢  苦(く)吟(ぎん)払(ふっ)拭(しょく)詩(し)腸(ちょう)蠢(うごめ)き
柳渚逍遙輕脚跟  柳(りゅう)渚(しょ)逍(しょう)遥(よう) 
             軽(かろ)やかなる脚(きゃく)跟(こん)


 師走衆議院選挙  師(し)走(わす)の衆(しゅう)議(ぎ)院(いん)選(せん)挙(きょ)
                        三橋信博
白日遮翳千里雲  白(はく)日(じつ) 遮(しゃ)翳(えい)す 千(せん)里(り)の雲(くも)
北風吹樹雪紛紛  北(きた)風(かぜ) 樹(じゅ)を吹(ふ)いて 雪(ゆき)紛々(ふんぷん)たり
驅車候補寒天巷  車(くるま)を駆(か)る候(こう)補(ほ) 寒(かん)天(てん)の巷(こう)
慌響辯論廬宅聞  慌(あわ)ただしく響(ひび)く弁(べん)論(ろん) 
           廬(ろ)宅(たく)に聞(き)こゆ


 有感祇園祭山鉾  祇(ぎ)園(おん)祭(まつり)山(やま)鉾(ぼこ)に感(かん)有(あ)り
                         安田裕子
錦緞懸装世界財  錦(きん)緞(たん)の懸(けん)装(そう)世(せ)界(かい)の財(ざい)
錚錚音色樂兮陪  錚(そう)錚(そう)たる音(おん)色(しょく)楽(らく)兮(けい)陪(ばい)す
天街觀衆忘三伏  天(てん)街(がい)の観(かん)衆(しゅう)三(さん)伏(ぷく)を忘(わす)れ
簇擁山鉾賦快哉  山(やま)鉾(ぼこ)に簇(そう)擁(よう)し快(かい)哉(さい)を賦(ふ)す


芳春河岸     芳春の河岸           
                         池端大二
金澤城樓聳半空  金沢(かなざわ)の城楼(じようろう) 半空(はんくう)に聳(そび)え
犀川兩岸百花紅  犀川(さいかわ)の両岸(りようがん) 百花(ひやつか)紅(くれない)なり
久集白頭文筆友  久(ひさ)しく集(つど)う白頭(はくとう) 文筆(ぶんぴつ)の友(とも)
觀櫻樹下暖風中  観桜(かんおう)の樹下(じゆか) 暖風(だんぷう)の中(なか)


小松木場潟全國植樹際  小松木場潟全国植樹際
                          能登久弘
牙湖鏡面映靈峰  牙(が)湖(こ)の鏡面(きようめん) 霊峰(れいほう)を映(うつ)し
周路逍揺輕竹筇  周路(しゆうろ) 逍揺(しようよう)すれば竹筇(ちくきよう)軽(かる)し
天子行幸慶祭典  天子(てんし) 行幸(ぎようこう)して 祭典(さいてん)を慶(よろこ)ぶ
杉松植樹禱繁穠  杉松(さんしよう)を植樹(しよくじゆ)して 繁穠(はんじよう)を
          禱(いの)る


 山村春景     山村(さんそん)春(しゆん)景(けい)   
                          水野智之
關關鶯語似呼人  関(かん)関(かん)たる鶯(おう)語(ご) 人(ひと)呼(よ)ぶに似(に)たり
苑路停筇啼鳥親  苑(えん)路(ろ) 筇(つえ)を停(とど)めて啼鳥(ていちよう)に親(した)しむ 禱禱
萬朶梅花香和酒  万朶(ばんだ)の梅花(ばいか) 香(かお)り酒(さけ)に和(わ)す
宛然如畫一村春  宛然(えんぜん)として画(え)の如(ごと)し 一(いつ)村(そん)の春(はる)


立舞鶴引揚桟橋  舞鶴(まいづる)引揚(ひきあげ)桟橋(さんばし)に立つ
                          安津謙二
復員萬載引揚船  復員(ふくいん)満載(まんさい)す 引揚船(ひきあげせん)
荒海航來有眼前  荒海(こうかい)航(わた)り来(きた)りて 眼前(がんぜん)に有り
悲願十年慈母影  悲願(ひがん)十年 慈母(じぼ)の影
子姿求續意淒然  子の姿求め続けて 意(い)淒然(せいぜん)


 聞「小松城本丸櫓臺石垣」登降禁止願修築
「小(こ)松(まつ)城(じょう)本(ほん)丸(まる)櫓(ろ)台(だい)石(いし)垣(がき)」の登(とう)降(こう)禁(きん)止(し)を聞(き)いて、修(しゅう)築(ちく)を願(ねが)う
                          北畠能房
小松伊昔擬金城  小(こ)松(まつ)は伊(こ)れ昔(むかし) 金(きん)城(じょう)に擬(ぎ)す
太守施行改作令  太(たい)守(しゅ)施(せ)行(こう)す 改(かい)作(さく)令(れい)
孤立櫓臺傳徃事  孤(こ)立(りゅう)の櫓(ろ)台(だい) 往(おう)事(じ)を伝(つた)えり
三州遠望尚鄕榮  三(さん)州(しゅう)遠(えん)望(ぼう)して 郷(きょう)栄(えい)を
          尚(ねが)う


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